子供のストレス

当院では、子供の円形脱毛症やアトピー性皮膚炎に関して、子供が受けるストレスを4つの期間で類型化しています。

1.就学前(2歳から5歳)

円形脱毛症やアトピー性皮膚炎を発症している子供の性格・性質の特徴として、年齢の割に非常にしっかりしていて大人びてみえる、ということがあります。これは、元々もっている性格や性質というよりは、学習して身についたものと考えられます。

就学前の子供は、自分自身から、自分が脱毛していることを「恥ずかしい」「人と違う」とは認識していません。「恥ずかしい」「人と違う」と考えているのは、周りの大人、母親であったり父親、祖父母や親せきなど身近にいる大人です。お母さんで多いのは、自分のせいで子供が円形脱毛症になったのではないか、という罪悪感を抱えて子供に接している中で、「子供に申し訳ない」「子供がかわいそう」「自分がなんとかしてやらなければ」という気持ちが非常に強く、子供に直接は言葉では伝えない(伝えられない)という状況です。子供は、ノンバーバルコミュニケーションの達人なので、言葉にださずとも敏感に「自分が困らせているのではないか」と感じ「自分がしっかりしなければいけない」と、親のことを気遣います。概して、大人からみると、「とてもしっかりしていて、気が利く、良い子」だとなります。子供は、そのメッセージを受け取り、さらに「その期待に応えよう」としてしまいます。でも、心のうちでは、「なんでなの?」という気持ちが強くあります。自分の存在がお母さんを困らせているのだろうか、それはなんでなんだろうか、知りたいのです。でも、「聞いたら、きっとお母さんを困らせる」ということも知っています。子供は、一番身近にいる母親の気持ちには(大人が考えている以上に)敏感です。高度な「気持ちセンサー」を持っています。知りたいけど、聞きたいけど、困らせてしまう、だから我慢しなきゃ。そうやって、気づかれないように硬い殻をつくってしまいます。お母さんも、周りの大人は気づきません。「良い子」は、親を困らすことをしない、と言葉にしないで「見えない期待」をしています。

また、家庭環境としては、シングルマザーであるというケースも、非常に多くみられます。これは、父親に関することを(病気と同じように)子供にきちんと伝えない(伝えられない)ことも関係していると考えられます。まだ小さいのだから大きくなってから伝えよう、今子供に言ったところでわからないだろう、と大人は考えがちです。ですが、子供は、父親という存在がかけていることを「うすうす」感づいています。そして、「そのこと」をお母さんに質問してはいけない、ということも。でも、子供は心の奥底で、知りたいのです。ですから、保育園や病院など、大人の男の人と接することが出来る環境になると、自分からコミュニケーションをとろうとする傾向があります。

なお、家庭環境という点からですと、両親が離婚していなくても、父親とのコミュニケーションがとりにくい(お父さんが発達障害であるようなケース)、兄弟にばかり親の気がいく状態で自分があまりかまってもらえていない(受験や病気などのケース)、というような場合もあります。突発的に怒りや寂しさといった感情が爆発する代替として、発症することもあります。

2.小学校低学年(就学前後~3年生くらい)

発症が早いお子さんについて、小学校に行く前には、殆どカツラを子供につけさせる親御さんはおられないのですが、小学校でいじめられないように、と小学校にあがる際にカツラを購入されるケースが多くあります。初めての円形脱毛症の症状が小学校である場合もそうですが、「いじめられないように」という理由で、カツラをつけはじめます。

これは、親子共に非常にストレスを抱えることになります。子供は、カツラがばれたらどうしよう、と常に気を遣いますし、親はカツラがばれたらいじめられるのではないか、と子供の心配を常にすることになります。

「いじめ」に関しては、カツラを使用していなくても、「禿げている」ことでいじめられることもあります。いずれにせよ、髪がない(酷い場合は、眉毛やまつ毛、体毛もない)ことで、いじめを受けるのではないか、(実際に)いじめられる、ということが大きなストレスとなります。

この時期の親子間の関係としては(脱毛症を発症しているお子さんのおられる親子間という意味です)、子供が非常に親の感情に敏感であること、不安や恐れといった負の感情については増幅させる傾向にあることが見受けられます。具体的には、お母さんが心配性で車の運転を気にかけている場合、お母さんが「運転がきちんとできずに何かに当ててしまったらどうしよう」と不安な思いを「ちゃんと運転できるかしら」と口によく出してしまうと、子供は「お母さんがちゃんと運転できるかどうか心配」で「車がちゃんと動くか心配」してしまい「車が大丈夫なことを確認しないと乗れない」というような行動に出る、というようなケースです。周りの大人からすると、子供が突拍子もない行動に出ていると考えがちですが、子供の視点からするとよく考えて行っているに過ぎません。ですが、親子間の距離が近いにも関わらず、コミュニケーションは遠い(本音で親子が語ることがない)という特徴から、親御さんは子供の行動を「脱毛症があるから、突拍子もない行動にでるのだろう」「脱毛症があるから、注意してはかわいそう」とゆがんだとらえ方をする傾向があります。子供は、その言葉にならない(直接言われることのない)「脱毛症だから」というニュアンスを心で聞き取ってしまいます。そして、「脱毛症だから」、”友達が出来ない”や”いじめられる”、”親に心配をかけている”という「思い込み」がどんどんと大きくなっていってしまいます。

第3期へ

このページの先頭へ