内科領域でのステロイド療法 慢性関節リウマチ(RA)
1948年、初めて慢性関節リウマチ患者にコルチゾンを投与し、投与直後より劇的な効果を認め時間の単位で症状、炎症反応が抑制されることが報告されました。
このため、ステロイド剤は慢性関節リウマチの特効薬として、一時期大量に無制限に使用されました。しかし、数年間の臨床経験の結果、ステロイド剤は慢性関節リウマチの根本的な治療ではなく減量により症状が悪化すること、患者は依存症となり減量が難しくなること、ステロイド剤自体に重篤な副作用のあることが明らかとなりました。この結果は、多くの医師を失望させ、ステロイド剤のもつ有害性を広く認識させることとなりました。現在、慢性関節リウマチにおけるステロイド剤の使用は他の抗リウマチ剤でコントロール出来ない難治性の慢性関節リウマチ患者に限られます。そして、その使用に際してはステロイド剤の持つ有益性と有害性を十分考慮した投与が求められています。
ステロイド療法の適用
慢性関節リウマチにおけるステロイド剤の使用は、各種非ステロイド性抗炎症剤や、金、ペニシラミン等の遅効性抗リウマチ剤に無効で以下の条件を満たす症例に限られます。
1.中等度以上の激しい関節炎があり全身症状(貧血、発熱、体重減少)を伴っている
2.血管円を伴う
3.社会生活を著しく脅かす恐れのある場合(失業、不具状態など)
4.必要な日だけ服用し、すぐに中止できることが分かっている場合(冠婚葬祭、小旅行など)
ステロイド剤により悪化すると予想される疾患(感染症、消化性潰瘍、精神病、コントロール不良の糖尿病、著しい骨粗鬆症など)を合併している患者では適用条件を満たしていてもステロイド剤は避けるべきです。
ステロイド剤の投与量・投与方法
ステロイド剤は、慢性関節リウマチの根本的な治療法でないため減量により再燃することが多く、長期間にわたる投与となります。また、慢性関節リウマチ自体による骨粗鬆症があること、非ステロイド性消炎鎮痛剤を服用しているため消化性潰瘍になりやすいなど他の疾患より副作用が出現しやすくなっています。
慢性関節リウマチにおけるステロイド療法の副作用の特徴
慢性関節リウマチのステロイド療法では、慢性関節リウマチ自体による骨粗鬆症を有する患者が多いため長管骨骨折、椎体圧迫骨折、無菌性大腿骨頭壊死などの筋、骨格系の副作用に注意すべきです。とくに、ADLの障害された閉経以後の女性は骨粗鬆症の進行が早くなっています。また、ステロイド剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤を併用することが多いため消化性潰瘍の出現頻度が高くなります。最近、少量のステロイド剤でも長期投与すると動脈硬化症を促進することが問題になっています。軽度の副作用にも注意を向けることが大切です。