妊娠とステロイド療法
全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、アトピー、円形脱毛症などは、妊娠可能な年齢層の女性に多い病気です。そのため、ステロイド療法中の妊娠あるいは妊娠中のステロイド療法がしばしば問題になります。
ステロイド剤を長期投与しなければならないような疾患は難治性であり、出産後に悪化することも多いので、とくに出産を希望しない限り妊娠を避けることが望ましいとされています。
妊娠中にステロイド療法を行った場合、胎児にまったく影響がないかどうかに関しては、正確な結論が出ていないですし、ステロイドの安全性が完全に保証されているとは言い難いのです。従って、医学書で「妊娠中、ステロイド剤を投与してはいけないというはっきりした根拠もなく、ステロイド療法中、妊娠は絶対避けるべきであるという理由もない」といった内容があったとしても、それが確かなものだという保証はありません。また、各種の合成ステロイド剤がどの程度、帯板を通過するのかも問題ですが、同位元素で標識したプレドニゾロンを使用した成績によると、胎児における濃度は母体の約10分の1に達するという報告もあります。
ステロイド療法を受けている患者が妊娠を希望する時には、原疾患の状態を十分に考慮し、もしステロイド剤を中止できる状態であれば中止後に、もし中止が困難な状態であればできるだけ少量投与の状態で妊娠するようにアドバイスするべきなのです。少なくとも、妊娠14週までステロイド剤の投与を中止することが出来れば安全です。