ステロイドの副作用

アトピー性皮膚炎とは切っても切れない関係にあるステロイドの副作用についてみていきます。副作用と一口にいっても、摂取していた期間、摂取していたステロイドの強さ、摂取方法(外用か内服か)によっても変わりますし、合併症として、感染症を併発している場合はステロイドの副作用との切り分けが難しい場合も多くあります。ここでは、基本的なステロイドの副作用を記します。

副腎皮質ステロイド療法の副作用とその発症機序
系統 副作用の内容 推定される発症機序
緑内障 眼圧の上昇
白内障 水晶体線維の凝固・壊死(?)
皮膚 創傷・術創の治癒遅延、皮下出血、皮下組織委縮、皮膚菲薄化、皮膚線条 線維芽細胞の増殖抑制、膠原線維の合成阻害、肉芽の退縮
ざ瘡、多毛 軽度のアンドロゲン様作用
ミオパチー、筋委縮 白筋における糖新生の障害、蚤白異化、低K
骨格 骨粗鬆症、脊椎圧迫骨折 蚤白異化、骨Caの吸収促進、負のCa平衡
無菌性(虚血性)骨壊死:特に大腿骨頭壊死 骨端部血管内の脂肪塞栓、血行途絶
消化器系 消化性潰瘍:特に胃潰瘍、消化管粘膜出血、腸穿孔 塩酸分泌促進、粘液分泌低下、結構障害、抗肉芽、プロスタグラジン合成抑制
脂肪肝、急性膵炎 脂肪沈着、脂肪塞栓、血行障害
中枢神経系 精神障害(うつ状態→自殺企図、躁状態、分裂病様)、多幸感、異常食欲亢進(→肥満)、不眠 神経伝達物質への影響、シナプスの神経伝達潜伏時間の延長
脳圧亢進、偽脳腫瘍症状、けいれん、てんかん様症状 脳圧の亢進、脳内の水・電解質代謝異常
循環系 高血圧、Na・水貯溜(→浮腫)、低カリウム血症 軽度の鉱質ステロイド様作用
代謝系 ステロイド糖尿、潜在性糖尿病の顕性化、真性糖尿病の増悪、ケトアシドーシスの誘発、非ケトーシス・高浸透圧性昏睡の誘発 肝における糖新生の促進、抗インスリン作用、食欲増進効果
高脂血症(コレステロール、TG増加)、中心性肥満、満月様顔貌 四肢皮下脂肪の脂肪分解→く幹・内臓への動員
内分泌系 成長抑制(小児)、月経異常・続発性無月経、間脳・下垂体・副腎系の抑制(→医原生副腎不全、副腎クリーゼ、ステロイド離脱症候群の発症) 間脳・下垂体抑制作用(ACTH、GH、TSH、ゴナドトロピンなどの分泌抑制)、副腎への直接の抑制作用
血管系 血栓形成、血栓性静脈炎、塞栓、梗塞 凝固因子の増加、抗プラスミン作用、血管壁の変化
血液像 白血球(とくに好中球)増加、好酸球・リンパ球の減少 好中球の生成・骨髄からの動員の促進、リンパ球生成抑制
免疫系 免疫反応の抑制、遅延型アレルギー反応の減退、各種感染症(化膿菌、結核菌、真菌、ウイルス、原虫など)の誘発・増悪 リンパ球・単球の減少、抗体産生の抑制、抗原抗体反応の抑制、白血球・マクロファージの遊走抑制、その他

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