円形脱毛症の子供をお持ちの親御さんへのメッセージ
子供の脱毛症の治療を行っている中で感じるのは、罹患歴が長くなると、脱毛症という病気を通してしか、親子間のコミュニケーションが出来ないのではないか、ということです。「脱毛症だから、○○」というように、全ての原因を病気のせいにしてしまう、という現象も多くあります。また、子供のころに発症して成人された患者さんの多くは、「親のせいで、自分は脱毛症になった」という傾向もあります。ですが、よくよくお話を伺うと、実際には過去そういった話を親子でされてはいません。
脱毛症が、親子間の大きな問題であるにもかかわらず、タブー視されていて、一切口に出されていない、ということが非常に多いのです。
子供とストレスは、脱毛症の発症、再発に大きく関係しています。親御さんには、そのことを、まず、しっかりと認識して欲しいと考えます。そして、脱毛症に対して、お子さんと一緒に、真正面から対峙して欲しいのです。
お子さんの年齢が低ければ低いほど、言葉にならないノンバーバールなコミュニケーションの割合が大きいのです。言葉にしない不安は、不安を言葉にしたものよりも、大きくなります。不安が不安をよび、より大きな不安になります。脱毛症が発症します。
脱毛症を引き起こした不安と、脱毛症になった不安が、もっと大きな不安になります。
不安を「不安」と感じたくないと考えます。
不安を引き起こしている原因、脱毛症について、なかったことにしようと考えます。
それは、脱毛症の治療にも表れます。
自分が受けている脱毛症の治療が、どういった治療なのか、医者に説明を求めることはほとんどありません。治療の結果、よくなるのか、ならないのか、だけでいいのです。治療を受けてもよくならないと、違う病院にいって、違う治療を受けます。何故、治療の説明を受けないのでしょう。脱毛症であること自体、悪いことだと思うから?説明してと医者に言うと、怒られるから?脱毛症であることを自分で認めたくないから?
脱毛症は、なかったことにしたいから?
・・・でも、なかったことには、出来ないのですよね?
親も、子も、ともに、脱毛症をなかったことにしようとしながら、なかったことに出来ないのです。そもそも、なかったことになんて、出来ないのです。
どうか、病気と真正面から向き合って下さい。それは、早ければ早いほどいいのです。
何故なら、殆どの場合、病院での治療を行っているからです。現状、病院に通っていて、ステロイドを一切使用せずに治療を行うことは、ありません。ステロイドの長期使用は、身体に悪影響を及ぼします。
子供の脱毛症が100%、ストレスによるものだというわけではありません。ストレスで発症する割合が、大人に比べて、多いです。そして、ストレスで発症した場合は、ストレスを減らすことで治ります。どうか、薬の使用は最小限にしてください。子供のストレスを減らすには、親御さんの協力が必要です。子供だからといって、おざなりに対応しないでください。一人の人間として、子供に向き合ってください。分からないことは分からないと伝え、共に考えようと伝えて下さい。飾ることもなく、今の自分の生き方をお子さんに伝えて下さい。本音でぶつかってください。
そして、もし、お子さんが脱毛症になってしまったら、一旦「脱毛症じゃなかったら、どう接するか」考えてみてください。小さいお子さんが不安に感じるのは、「脱毛している自分」ではなく、「脱毛している自分を腫れ物に触るように接する親の不安」です。例えば、禿げているのが原因でいじめられてしまった時、「脱毛症だから仕方ない」「脱毛症に生んでしまった自分が悪い」というのではなく、「いじめられるのは脱毛症の子だけじゃない」と考えて、子供と一緒に考えてあげてください。そして、脱毛症の治療についても、一緒に考えてあげてください。
脱毛症は、命に係わる病気ではありません。脱毛症が原因で、死ぬかもしれない、というものではありません。ですが、脱毛症によって引き起こされる悩みは、時に、本人も家族も死んだ方がまし、と思わせるほど深くなります。悩みは一人で抱え込めば、モンスター並みに大きくなります。が、同じ悩みを抱えている人がいるんだとわかれば、少し小さくなります。
当院では、数多くの脱毛症のお子さん、脱毛症のお子さんをかかえる親御さんがおられます。みなさん、同じような悩みをかかえています。一緒に語り合うことで、病気に対する悩みは小さく、軽くなります。
お子さんと一緒に、力強く生きていってほしいと思います。