免疫機能はなぜ低下するのか

免疫とは、ひと言で言えば、「人が生まれながらにして持つ、外敵から身体を守る防御システム」です。医学的にいうと、生体(医学では生きた人間の身体を「生体」といいます)は、生まれつき体内にあったもの(自己)と、そうでないもの(非自己)を識別する能力を持っており、非自己である異物(細菌やウイルスなど)が体内に入ってくると、それをすぐに識別して排除しようとする、この働きが「免疫」ということになります。

体内に入ってきたものが非自己であると識別すると、身体は「抗体」をつくり、それを記憶します。そして、再び同じ非自己が体内に入ってくると、それに抗体が結びついて非自己を排除しようとするわけです。
この場合の、抗体と結びつく非自己を「抗原(アレルゲン)」といい、抗原と抗体が結びつく現象を「抗原抗体反応」または「免疫反応」といいます。

健全な生体は、多少の異物の進入に関しては、この免疫反応が働いて、発病を予防します。ところが免疫は、非自己の成分が身体に有害か無害化という判断まではできません。そして、なんらかの理由で、本来なら無害なはずの物質(たんぱく質)に対してまでも過剰に反応して、逆に身体を攻撃してしまうことがあります。これが「アレルギー反応」です。

アレルギー治療を難しくしているもうひとつの理由が、この免疫機能(力)の低下の問題です。

アトピー・アレルギー 表

※図をクリックすると拡大して表示されます。

先に述べたように、正常な免疫力があれば、生体は健康を維持できます。しかし、免疫機能が低下して、抗原が体に進入しやすくなっていたり、抗原を除去する力が弱く、いつでも身体の中に留まってしまうと、アレルギーになりやすいだけでなく、一度かかったアレルギーはなかなか改善されません。

アレルギー発症の直接の引き金(誘因)となるのは抗原ですが、アレルギーになりやすくなったり、治りにくくなったりする誘因(これを増悪因子といいます)は免疫機能の低下にあるということです。
ところで、生体はどういう症状になると免疫機能が低下するのでしょうか。

現代社会は、生体の免疫系に影響を及ぼすものであふれています。抗生物質やステロイドなどの医薬品の投与、タバコ、無理なダイエット、ストレス、そして他の疾患、肝機能障害、胃腸障害、血行障害、糖尿病など、すべて免疫力を低下させる危険性をはらんでいます。

生体には中枢神経系、内分泌系、免疫系の系統のネットワークが網の目のように張りめぐらされ、それぞれ微妙なバランスを保ちながら役割分担をしていることで健康が維持されています。

ということはつまり、これらのどこに異常があっても、それぞれが影響を受けることになります。内分泌系の疾患や自律神経などの中枢神経系疾患も、免疫力低下の一因になるということです。

同様に、免疫機能が低下することによって、中枢神経系や内分泌系が影響を受けることもあります。中枢神経系では頭痛、うつ病、イライラ、ぼんやり、不協調、記憶力減退などが、内分泌系では副腎皮質ホルモンの異常や女性の場合はPMSや生理不順、不妊症などを起こすことがあります。

ストレスが免疫機能を乱す

免疫機能を低下させる大きな原因として、ココロ(ストレス)の問題があります。

人間のココロをつかさどっているのは脳であり、このココロの手足の役割を果たしているのが自律神経(中枢神経系のひとつ)、つまり交感神経と副交感神経です。そして、この自律神経に大きな影響を与えるのが、ストレスです。

交感神経(活動するための神経)と副交感神経(休息するための神経)は相反する作用を持っており、必要に応じてどちらかの働きを活発にして生体内のバランスを保っています(このバランスをうまくとれなくなるのが自律神経失調症です。)現代社会では、人は常時交感神経を働かせておかなければならず、とくにストレスは、交感神経を激しい緊張状態に陥れるため、交感神経と副交感神経のバランスを崩す大きな原因となることがわかっています(睡眠不足も同様です)。

そして、この自律神経の微妙なバランスが崩れると、免疫機能にも影響が現れるというわけです。

アトピー性皮膚炎では皮膚のかゆみや治療法に対する不安などがストレスになることも多いですし、小さい子どもの場合、お母さんのイライラなどがストレスになることも多いといわれます。

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