アトピーと温泉治療について

当院に来られる患者さんの中には、温泉治療を行っていた方も多くおられます。
温泉治療の効果としてあげられるのは、「転地効果」といって、場所や環境が変わることにより自律神経系への効果です。
皮膚そのものに対しては、正直、悪化させることが多い治療法です。

アトピー性皮膚炎の患者さんの多くは、「冷え」の症状を持っています。これは、「体温調整中枢」に異常をきたしているためです。

もともと人間の脳は、人が持っているエネルギー量に合わせて体温を調整するようになっています。例えば、エネルギー量を3000kCal常時保有している人は、内蔵へ1000kCal、脳へ1500kCal、皮膚へ500kCalを配分できます。ですが、エネルギー量を1500kCalしか常時保有できない人は、内蔵へ500kCal、脳へ750kCal、皮膚へ250kCalしか配分できません。限られたエネルギー量しかありませんので、脳は、エネルギー量を消費しないように、血管を細くします。結果的に、体温が下がり「冷え」の症状が出ます。

「冷え」を解消するには、もともと保有するエネルギー量を上げていかないといけないのですが、てっとりばやく「体温を上げて冷えを解消しよう」とすると「温泉に入って体温を上げるのがいい」と思われるようです。

実際に、温泉に入って体温は一時的に上がります。が、すぐに、さらに体温が下がります。

温泉から上がって、しばらくすると逆に「寒い」と感じる症状です。

これは、熱い温泉に入ることで、発汗が起こり交感神経が活発になるためです。交感神経が活発になるのは、興奮状態のときであり緊張している状態になります。この状態は、血管を細くします。
「冷え」の症状自体が血管が細くなっている状態であり、「冷え」を解消するためには、血管を維持する副交感神経を活発にさせる必要があるのですが、熱いお湯に入り汗をかくことは全く正反対のことを行っていることになります。そのため、ますます細い血管を細くし、体温を下げることにつながってしまうのです。

また、温泉の含有物は、アトピーでキズだらけの皮膚には、(たとえ良い効能があるといわれる含有物でも)脳には単なる異物と判断され、逆にアレルギー反応を起こすことにつながります。

アトピーの症状がひどい時期に、温泉療法を行うことは、総合的に見てマイナスが大きいといえます。

アトピーを完治させるには、なぜ自律神経に異常がおきたのか、なぜホルモンバランスが崩れていまったのか、といった根本的な問題に向き合い、正常な状態に戻すことが必要です。

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