アトピー性皮膚炎が病院で完治しない理由
薬の長期使用がアトピー性皮膚炎を重症化している
アトピー性皮膚炎の初期において、適切な対応をしていれば、それほど重症化することは考えにくいことです。アトピー性皮膚炎が長期にわたり重症化していく過程では、知らず知らずのうちに、ステロイド剤や免疫抑制剤を必要以上に体内に取り込んでしまい、薬によって皮膚が破壊され、同時に身体の持っている自己免疫力が大幅に低下してしまうことで他の感染症や細菌の増殖を許してしまった結果、「アトピー性皮膚炎」という病名でひとくくりにされてしまう、ということが起こっていると考えられます。本来は、自己免疫力を上げることで、炎症のもとになる原因物質を排出する、結果、治癒に至る、というプロセスを経るはずが、逆の流れになっています。人間の身体の仕組みを考えると、治るはずがないのです。
人間の身体は、非常に複雑な有機的つながりを内包していますが、その活動の根幹にあるシステムはシンプルです。例えば、小さな切り傷が出来た時に、その部分が腫れ、痛痒い感じを受け、時には膿み、熱を持ち、やがてかさぶたが出来て、いつの間にか癒えている、それは全て自己免疫力によるプロセスです。小さな切り傷が出来た時に、ステロイド内服薬や外用薬を、もし使用したなら?腫れや赤みや、痛痒い感じは、瞬間的に消えるでしょう。傷はそのままです。傷が治りきらないうちに、転んで同じところをケガしてしまったら?バイキンが傷からはいってしまったら、自己免疫力が抑えられている体内で、バイキンが増殖してしまい、別の病気を誘発してしまうかもしれません。そして、自己免疫力が抑えられてしまうと、そもそも傷の治りも遅いのです。
当院に来られる方は、数年から十数年以上アトピー性皮膚炎が治らない状態である場合が多いです。多くは、乳幼児からアトピー性皮膚炎を発症しており、改善と悪化を繰り返しながら、悩み続けてこられた患者さん達です。病院を転々としたり、アトピーが治るといわれる健康食品、器具、ありとあらゆるものを試してこられた、そんな方が多くおられます。口をそろえたように「病院では、改善することもあったが治らなかった」と言われます。ステロイド軟膏、プロトピック軟膏、医院特製の保湿剤、抗アレルギー剤など、様々な薬を医師に言われるまま「真面目に」「きちんと」使用されてきた方が多くおられます。長期的にアトピー性皮膚炎が重症化されている患者さんの傾向として、真面目である、と感じます。病院で言われた薬の量、回数をしっかり守っておられた。しかし、悪化していく。医師からの納得できる説明はなく、薬の量や、種類が変わるだけ。いつ、この痒みから解放されるのか、先が見えなくなり、このまま治ることがないのではないかと思う。アトピーで家族や友人との人間関係もぎくしゃくして、学校も仕事もうまくいかない。そんな負の連鎖が続いてしまう。そして、「アトピーに産んだ親が悪い」とか「自分が悪いことをしたせいでアトピーが悪化する」といったネガティブな考えに人生を支配されてしまう方もおられます。
ですが、「アトピー性皮膚炎で人生が台無しになった」と自暴自棄にならないで欲しいのです。アトピー性皮膚炎という病気は治る病気です。乱暴かもしれませんが、アトピーを発症するのは風邪をひくようなものです。「何故、風邪をひいたの?」と聞かれたら、なんと答えますか?「誰かにうつされたかも?」しれないし「肌寒いのに薄着で寝てしまったから?」かもしれませんし、「無理しすぎたから?」かもしれません。同じ状況でも、その日、その時の体調で、風邪をひくこともあるし、ひかないこともあります。皮膚も同様です。赤くなって痒みを感じることに対して、原因を明確に特定することはできません。たまたまそうなってしまった、のです。人よりも皮膚が敏感なのかもしれないですし、アレルギーがあるのかもしれません。単純なアトピー性皮膚炎は、自然と治ることがよくあります。ステロイドが含まれているかゆみ止めの薬を何回か使用したくらいでは、身体の免疫機構はゆるぎません。人間の体内では、1日で20~50mgのステロイドホルモンが生産されているといわれます。この量を超えて長期間、ステロイドを摂取すると、体内の生産器官に支障をきたします。プレドニゾロンは経口摂取(あるいは注射)であり、体内への吸収が比較的おだやかな、アトピー性皮膚炎で処方されるステロイド外用薬の使用量との比較はナンセンスかもしれませんが、皮膚自体が薄くなっており、皮膚に裂傷がみられる重度のアトピー性皮膚炎については、正常な皮膚に比べるとその吸収率はかなり高くなっていると考えられます。本来、バリア機能が低下している薄い皮膚には、ステロイドは使用しません。ですが、改善がみられない場合、医師が処方するステロイドのレベルがあがり、量が増えることは、アトピー性皮膚炎の患者さんであれば経験されていることでしょう。医師の側からすると、原因がわからない(ので、標準治療であるステロイド軟膏とタクロリムス軟膏を処方するしかない。それなのにステロイドは嫌だと言われるとどうしようもない)、経験的にアトピー性皮膚炎の患者さんは納得してくれにくい(何故治らないのか、しつこく聞いてくる)、どうせ長く通院するわけじゃない、ということもあり、アトピー性皮膚炎の患者さんを嫌がる(まっとうに治療しない)という場合もあるようです。結果的に、慎重に取り扱うべきステロイド剤が乱用されてしまう。その最大の被害者が、アトピー性皮膚炎の患者さん達なのです。
重症化してしまったアトピー性皮膚炎の患者さんにおいては、適切にステロイド剤が処方されていないケースが殆どではないでしょうか。(病院の処方だけでなく、薬局で購入できる薬品にもステロイドが含まれるものもあります。この場合は、知らず知らず摂取量が増えていると考えられます。)ただ、重症化してしまった場合でも、数年かかるかもしれませんが根気よく治療を行えば治ります。将来を、未来を、あきらめないでほしいのです。
そして、意識して頂きたいのは、薬は毒にもなりうる、ということです。医師が処方しているのだから大丈夫、と思いこまず、自分の身体に取り込む以上、副作用はないのか、しっかりと確認をしてください。
一切、薬は使用してはいけない、という極論にはしるつもりはありませんが、薬のもつ効果と副作用を理解したうえで「今、本当にその薬を使わなければいけないのか」と考える必要があります。やむを得ない場合は、短期間で使用を中止すること、その後に、身体の免疫機能を正常に戻すこと。薬の効果と副作用を自分でコントロールすることが大切です。