脱毛症のシャンプーの選び方

脱毛症の方の治療を始める前、あるいは初めてから、よく聞かれるご質問が「シャンプーは何を使ったらいいのか?」というものです。

抜け毛が気になると、病院に行く前に手近なところから育毛シャンプー、養毛シャンプーといった薬用シャンプーを使いだされる方が殆どです。1本1,000円程度のものから10,000円を超えるものまで、様々なものがあります。「使ってみて効果がありましたか?」と伺っても「はっきりとは分からないですが・・・」と答えられるケースが殆どですが、やめるのにも勇気がいるように見受けられます。

当院では、シャンプーは、普通の安いものでいいですよ、とお伝えしています。

高価なシャンプーは成分が皮膚に浸透することをうたっているものが多いのですが、まず、油分が含まれていない限り皮膚には吸収されません。(角質層では脂溶性が吸収されやすい、という性質をもつため。)また、乳化剤を使用している製品である程度の吸収がなされたとしても、人の身体には異物を排除する機能(免疫)がありますので、全てが吸収されるわけではありません。あまり効果は期待できないと考えられます。

なお、保湿をうたった薬用シャンプーは要注意です。

脱毛症でフケが多く出ると、皮膚が乾燥している、と思われる方が多くいらっしゃいます。もともと皮膚には、皮脂を出して皮膚にバリアをはる機能があります。特に冬場の方が、皮脂は多く出ます。なぜなら、気温の下がる冬場の方が、皮膚の再生力が低下するからです。(冬になって、皮膚表面の血行が悪くなると、真皮や角質に十分に栄養がいきわたらなくなり、皮膚の再生力が低下するためです。)この時に、保湿をしてしまうと、脳が脂が多すぎると認識して、これを排出しようとします。そのために、過剰に角質がはがれてしまいます。この時、もともと、皮膚が弱い方の場合は、症状が大きくでます。

ですから、保湿成分の入っているシャンプーは使用せず、普通の洗浄力のあるシャンプーを使うのです。

脱毛症の方ほど、しっかりと洗浄することをおすすめします。できれば、2回から3回シャンプーします。シャンプーの際に、爪を立ててゴシゴシするのはいけません。(皮膚に傷がつくため。傷がつくと、そこからシャンプーの成分が入り込み、免疫機能によって排除する活動が行われます。これが、赤みやかゆみ、炎症をおこします。)指の腹で全体をしっかりと洗います。シャンプーの後は、頭部全体を軽くもむようにして、脂がしっかりと取れているか確認しましょう。このマッサージは、血行を良くするようなものではなく、自分の頭皮のコンディションを確認するためのものです。なお、脂がしっかりととれていない、しっかりと洗っているのにカユミや違和感があれば、シャンプーがあっていないので、直ちに使用を中止してください。

なお、シャンプーを行ってすぐに頭皮のコンディションを確認して、2時間後に再び頭皮全体を指の腹で触ってみてください。皮脂は、すっかり元に戻っています。

抜け毛が多いとき、髪が薄くなって抜け毛が気になるとき、シャンプーをすることが「怖い」と感じられることもあるでしょう。ですが、顔や手と同じく、頭皮もホコリや汚れがつきます。それに、皮脂腺が多いのは、頭部(頭皮、顔)です。手を洗うのと同じように、汚れが気になったら洗う習慣をぜひつけて欲しいと思います。

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