AGA(男性型脱毛症)
AGA(男性型脱毛症)の症状
AGAは、そもそもどのような病気、症状なのでしょうか。
まずは、毛髪の正常な状態をみてみます。
通常、人間の髪の毛は1日に0.3ミリずつ伸びていくといわれます。但し、かなり個人差があり、平均すると月に1cmから3cmほどといわれます。この髪の毛が伸びている期間を「成長期」と呼んでいます。頭部全体の毛のうち、約90%が常時、成長期にあるといわれています。この期間は、毛根部の下部にあり毛をつくりだす毛球の活動が活発になります。成長期の始めのうちは柔らかい軟毛の状態ですが、成長するにつれ硬い毛に育っていきます。
毛球の底はへこんでおり、その真ん中に毛乳頭があります。毛乳頭には、血管から栄養分や酸素が運ばれ、毛乳頭の周りにある毛母細胞が分裂・増殖を繰り返すことで髪をつくりだします。なお、毛乳頭が抜けても毛母細胞が活動している限り、毛母細胞が分裂して新たな毛乳頭となるため、髪は生えてきます。
この成長期は、女性で5〜7年、男性で2〜5年といわれます。
成長期の終わりになると、毛母細胞の分裂が減少し、髪の成長が緩やかになり停止に向かいます。この退行期の期間は、約2~3週間と短い期間です。
毛母細胞の活動が完全に停止して、脱毛が始まりまる期間を休止期とよび、約2~3か月続きます。全ての毛髪のうち約10%がこの休止期といわれる状態にあります。
正常な毛周期は、以上の成長期から退行期を経て休止期に入り、再び成長期へ繰り返します。
AGAの症状は、この毛周期(ヘアサイクル)に異常がおこってくるためにおこります。
毛が生えてから抜けるまでの毛周期を繰り返していくうちに、毛の成長期が短くなり休止期にとどまる場合が多くなるために、毛が軟毛化して細く短くなります。頭部全体としては、額の生え際が後退して頭頂部の毛髪が少なくなっていきます。ある一定のパターンで、脱毛をしていくのが特徴です。
(但し、女性の症状はこれと異なり、頭頂部といった広い範囲で薄くなります。)
本来2年から6年の成長期が、3年になるとすると、その分、休止期が長くなってしまいます。
日本人男性の約3分の1がAGAを発症するといわれており、年代別には、20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降は40%を超えます。
AGAの発症には、遺伝と男性ホルモンが関係しています。
遺伝により発症のしやすさを判断します。父親や祖父が禿げていると、遺伝で自分も禿げるのでは、と思われる方も多いかと思いますが、可能性は高くなります。男性ホルモンは、一般的に頭の前部、頭頂部の軟毛化現象を引き起こす作用があるため、ホルモンバランスにより脱毛の症状の程度にかかわります。分かりやすくいうと、筋肉が隆々の男性の方が、女性的な細身の男性よりも頭が薄くなりやすい、といわれる現象です。
ただ、AGAの原因は、遺伝と男性ホルモンに限られたものではなく、他の要因も大きく絡んでいると考えられています。親が禿げているからといって必ずしも禿げるわけではないですし、男性ホルモンが多いからといって必ずしも髪が薄くなるわけではありません。あくまでも、可能性が高いというレベルです。
AGAがなぜ起こるのか、AGAを引き起こす体内の生理現象がどのようなものなのか、ということが全て明らかになっているわけではありません。
毛周期に異常を起こす原因を特定できてはいないのです。
では、自分が薄毛ではないかと思ったとき、明らかに禿げてきたときに、どうしたらいいのでしょうか。
今は、インターネットやTV、書籍などを通じて多くの情報を得ることが出来ます。それらの情報は、事実に基づいたものだけではなく、主観的なもの、事実に基づいていないものも多く含まれています。
薄毛やハゲの悩みは、なかなか他人とは共有しにくいですし、家族でも悩みに共感してくれるとも限りません。氾濫する情報の中から、自分が本当に必要とする情報を選ぶのに一緒に考えてくれる人も得づらいでしょう。
実際に当院で治療を受けられている患者さんも、様々な治療法を試してこられた方が多くいらっしゃいます。
自己流での対策、病院での治療、ヘアサロンでの育毛・増毛など、多くの方法が存在しています。
軽症の場合は、まず病院にいかずに、口コミやインターネットなどをもとに、病院で処方される薬剤を使用する方も増えてきています。
なお、病院での診断は、一般的に以下の点により行われます。
1.家族にAGAがいるか
2.額の生え際が後退、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっているかを確認
以上により、AGAかどうかが診断されます。
なおAGAの遺伝子検査がありますが、これはAGAであるかどうかを検査するのではなく、AGAになりやすいかどうか、AGAの治療薬であるフィナステリド(finasteride、治療薬の名称としてはプロペシア)が効くかどうかの検査を行うものです。検査時点でAGAであるかどうか、どの程度のAGAであるかの検査ではありませんので、ご注意ください。
では、病院でAGAと診断されたとき、あるいは自分でAGAだと判断をし、治療を行う場合、どのような治療法があるのでしょうか。